事業承継!クレーン業界のレジェンドはどのようにバトンタッチしたのか?〜小川建機の探訪記録vol.2

クレーンの作動油クリーニング、エアーエレメントの洗浄・交換・レンタルなど、クレーンや重機のメンテナンスを全国対応している建機サービス、尾形です。

さて、またまた訪ねてきました、小川建機社。
私が心から敬愛するレジェンド、小川会長に会いに!!

これまで足繁く通ったおかげで、小川会長もすっかりリラックス。いい雰囲気なので、今回は核心に迫る質問をしてしまいました!それは……事業承継の問題です!

実は小川建機も数年前に事業承継をしたばかり。今、レジェンド小川会長は一線を退いて、会社の経営は息子さんにバトンタッチされました。

とはいえ、多くの建設企業、クレーン会社でもなかなか事業承継が進んでおらず社会問題となっています。
誰もが気になるその辺り…突撃インタビューさせていただきました。

▽動画で見たい方はこちら!▽

事業承継の秘訣は、「次の世代がおもしろおかしくやれる会社をいかに作るか」

尾形
小川会長!今日も機械を直しているんですね! (※トレーラーのオーバーホール中)
小川さん
うん、老化防止にね(笑)。もう75歳になるけど、まだまだ勉強だよ。
尾形
何を言ってるんですか! 頭も体もバリバリ現役じゃないですか!
小川さん
まぁ、会長職になってからは、時間に余裕があるからね。
尾形
今日はそんな小川会長に建設業界、クレーン業界の事業承継問題についてお話を伺いに来たのです。
小川建機は事業承継の成功例だと思うのですが、代替わりするときに気を付けたことや心がけたことなどありますか?詳しく聞かせてください!
小川さん
事業承継と言っても、うちは大した規模の会社じゃないから(※大きな会社ですっ!!)、代替わりはスムーズだったと思いますよ。

心がけたことは、自分がいるうちに、「次の世代がおもしろおかしくやれる会社をいかに作るか」ですね。当然ですよ。つまらないものを引き継いでもモチベーション上がらないからね。引き継いで気持ちが盛り上がる会社じゃないと嬉しくないでしょ。

尾形
おお、名言! しかも深い! 愛ですね、愛! バトンを渡される側に対する愛を感じます!
小川さん
例えば、創業者である自分が武勇伝をいっぱい引っ提げて「俺はこんなにすごかったんだぞ! お前にもできるか?」と渡しても、それはちょっと引いちゃいますよね。若い世代も彼らなりに頑張っているわけですし、そもそも上の世代の武勇伝には興味がないですし。
尾形
そうかもしれませんね。

引き継いだからにはあれこれ言わない。任せるだけの信頼関係を築いておく。

小川さん
実際に私が息子に会社を渡したのは、息子が43歳くらいの時ですが、その時に役員や部長クラスの社員も一斉にリニューアルしましたよ。同世代で揃えて、完全に彼らのやり方に移行しました。業務の進め方が今と昔では全然違いますからね。我々アナログ世代は通用しないですよ。
尾形
それも英断ですね。スパッと引き渡すのも勇気ですよ。
小川さん
まぁ、そうして引き継いだわけですが、それから数年経って、今、息子は47歳になったかな。ある程度自分のやり方も確立されてきているのではないでしょうか。自分が47歳の時は、社長でありながらもバギーで遊んだりラリー行ったりしていましたね。クレーンも既に何十台も持っていましたし。自分は創業者だから、誰にも何も言われずに自由にやっていました。

だから、私も息子にあれこれ言わないようにしています。いい大人になって、親からあれこれ言われるのも嫌だと思いますしね。

でも、こっちから何も言わなくなったら、あっちからいろいろと話してくれるようになりました。面白いですよね。また、本人に任せるようになってからは社長としての責任感が増したような感じがしますね。実際に
前年度の売り上げは過去最高だったみたいで、調子良さそうですよ。

尾形
いい話じゃないですか!任せることができるのは、信頼関係があるからですよね。小川建機の事業承継はとても自然な感じがしますが、なかなかそうもいかないところも多いようで。事業承継の難しさって、何なのでしょうね。
小川さん
中小企業や零細企業だと、身内だけで役員を固めちゃうから逆に難しいのかな。身内間だとビジネスとして割り切れない部分も出てくるから、やりにくい部分もあったりしますよね。

小川建機の場合は、息子が社長をやっているけれど、役員はほとんど他人。身内はほとんどいません。それがいいんじゃないかな。意外と他人の方が信頼できたりするものです。

尾形
確かに。身内は愛憎併せ持っていますからね(笑)。では、代替わりされてからは、会長は第一線を退いたのですね。
小川さん
そうですね。会長なので相談役的な役割は担っていますが、実務はほとんどやっていません。でも、そのような立ち位置だからこそわかることもあります。

一歩引いて、会社を俯瞰できるのはいいことですよ。そうすることによって会社の問題点がわかったりしますからね。
現役の頃はいっぱいいっぱいで、毎日神経をすり減らしていましたが、今は自分の責任がないから気が楽です。

あえて、事業承継を人前で大々的にやる。そうすることで生まれる自覚と責任。

小川さん
最近では、こちらが暇そうに見えるのか、社員がいろいろなことを私に頼みにきますよ。「あれを直してほしい」、とかね。
尾形
うわぁ、ぜいたく! 会長が直接直すだなんて!
小川さん
いやいや、私にとってもいいんですよ。手仕事は脳を活性化させますからね。それに、引退してからいいこともあるんですよ。

最近、女房がやけに優しいんですよ。なんでこんなに優しいのかなって思うくらい(笑)。
本人には面と向かって言えないけどね。照れちゃう。

尾形
こっちが照れちゃいます!ラブラブなんですね。素敵です〜!ところで、事業承継の時は盛大なセレモニーをやったと聞いてますが、どんな感じだったのですか?
小川さん
それはもう大金を使ってやりましたよ(笑)。自分ではなく、現社長も含め若い社員が中心になってやりましたけどね。大パーティーですよ。

でも、そういう盛大なお披露目を自分達でやったというのは意味があると思いますよ。取引先や協力業者の前で、「これからはこのメンバーでやっていきます」って宣言するわけですから、身が引き締まりますよね。「これからは自分達がやっていくんだ!」という自覚と責任を感じるのではないでしょうか。

尾形
社長交代の時などは、普通はHPでお知らせしたりハガキ1枚出したりするだけですが、実際に場を設けてお伝えするのはいいですよね。深く心に刻まれて、思い出として語り継がれると思います。
小川さん
そう。そうやってみんなに認めてもらって、仲間も増えていって、仕事も広がっていきますからね。

自分が社長だった時は、他社とのお付き合いと言ってもほとんどがライバル関係でしたから、“面”として関係が広がっていくという感じではありませんでしたね。

でも、今の若い世代は柔軟ですよね。昔の関係などお構いなしに平気で繋がってっちゃいますから。ライバル会社っていう意識も、今の人達は持ってないんじゃないかな。

尾形
お客様も代替わりしていますからね。お互いにしがらみがないのでしょうね。
小川さん
そう。だから、早いうちに代替わりしたほうが会社のためにいいと思いますよ。いつまでも先代が居座っていたら、関係も広がりませんからね。

多角経営することで広がる可能性

小川さん
私がいつも言っているのは、商売を広く展開すること。クレーンだけではなく、運送や土木工事、リース業など多角的な経営をすることが生き残りの秘訣ですよ。ようやく今になって
運輸機工としての形になってきたのかなと思います。

ここまで会社が成長できたのは、地の利があったからではないでしょうか。ここが埼玉の田舎だったので、土地だけはあったのですよ。

また、近隣には採石場やセメント工場が多かったのもよかったです。物資を運ぶのにクレーンが必要ですからね。

これが一般的な建築であれば100tのクレーンで十分ですが、プラントや橋梁になってくると規模が違いますからね。500t、700tというクラスが必要ですし、そのクレーンを運ぶための大きなトレーラーも必要になってきます。要は、ここには需要があったということです。

実は今の社長には、小川建機の運送部門を担う「小川トランスポート」という会社を24歳の時からやらせているのですよ。

ですから、今回の事業承継は全くの経営の素人に引き継いだわけではなく、既に社長としての経験があってのことだったんです。

尾形
だからスムーズだったのですね!
小川さん
自分も23、4歳くらいで既に社長でしたからね。
しかし、事業承継ではグループ全体としての社長を「まとめて全部やれ」って引き継いだので、今までのようにはいかないんじゃないかな。彼にとっても試練だと思いますよ。

業務のIT化は課題。時流に乗って取り入れる柔軟さを持つこと

小川さん
子供のやり方にはあまり口は出さないようにしています(笑)。

親から見たら、子供はいつまでも子供ですが、やらせてみないと成長しないですからね。
いろいろと言いたくなりますけど、言ってもしょうがないですからね。しかし、自分の母親は103歳まで生きましたが、70歳の自分の息子に対していつまでも子供扱いしていましたよ(笑)。

尾形
なるほど。親としての葛藤もありますね。しかし、今は業務のIT化などもあるので、口を出すにも出せないですよね。勝手がわからないところもありますし。
小川さん
本当にそうですよ。何をやっているのかわからないところもあります。
今は業務の中でITを使いこなしている会社と使えていない会社、差が大きくなる一方ですよね。その辺は我々世代が苦手な部分なので、もう完全に委ねていますよ。
尾形
建設業はまだまだ遅れていますからね。いまだにFAXでやり取りしているところもありますし。
小川さん
ただでさえ、我々の業界は生き残りが大変ですからね。IT導入もそうですが多角経営しないと。クレーンだけだと弱いですからね。幸いにも小川建機はうまく時流に乗れたので、あとはおもしろおかしくやるだけですが(笑)

クレーン業界は弱い? 弱さゆえの戦略とは

尾形
小川建機ほどの会社でも、「生き残りが大変」と思うのですか?
小川さん
生き残りが大変というか、業種として立場が弱いと思いますよ。結局、頼まれないと出番がないですから。クレーンやレッカー屋は頼まれて現場に行って運ぶだけですからね。極端な話、会社間で取引などしていなくても、その日その時間さえ空いていればパッと仕事ができるのです。

しかし、トラックはそうではないですよね。トラックは前日に積まないといけないので、ある程度の計画は必要です。クレーンほど手軽ではない。ですから、もし最初に何か車両を買って商売を始めるのなら、トラックがいいと思いますよ。クレーンは初期費用も維持費も高いですし、何しろお金がかかりすぎますから(笑)。

尾形
意外な本音です!クレーンを勧めないなんて!
小川さん
これは余談ですが、例えば温泉などに行った際に垢すりサービスを頼むと、1時間7〜8000円くらいしますよね。

しかも、彼女たちは手業で仕事していますから仕入れもない。最高の商売だなって思いますよ。例えお客様が来なくても、仕入れがないので損失にはならない。こちらとは大違いですよ。こちらは仕入れも設備投資もしているので、やめるにやめれないんですよ。

尾形
とはいえ、小川会長は楽しんでいるじゃないですか! クレーン愛があっての小川建機だと感じていますよ!
小川さん
そう見えたら、そうかもしれませんね。
とにかく自分が楽しんで、そしておもしろおかしい会社にしてバトンタッチするのがいいのでしょうね。それが事業承継の秘訣ですかね。なんだかんだ言って、仕事が入りさえすれば面白い仕事だと思っていますよ。

私が社長の時は、自らが走り回って営業活動をして仕事をもらっていました。自分の足で営業して、客層増やして、少しずつですよ。

実際にクレーンを商売にするって大変なことなので、何年か前に社員に「みんなは運送屋をやった方がいい」と言って独立を促したことがあります。

しかし、結局やったのは1人でしたね。みなさんクレーンが好きなんでしょうかね。

小川会長から見たクレーンの魅力とは?

尾形
小川会長から見たクレーン業の魅力とは?
小川さん
魅力ってあるのかな(笑)。なんでしょうね。
クレーンから派生させて、商売を広げていけることでしょうかね。

まず、「重いものを運びたい」という需要を起点として考えると、
そのためにはクレーンとトラックが必要になりますよね。この時点で運送業もやれるってことですよ。

クレーンとトラックさえあれば、鉄骨やコンクリートも運べますし、せっかくだから工事までこちらでやってしまうという選択肢もあります。そうなると、工事部門も展開できますよね。

クレーンも小さなもので始めるのではなく、ある程度のトン数で大きく始めた方が仕事も広がります。小川建機も大きなクレーンをたくさん保有しているおかげで、風力発電のタービンを運んだり橋梁の資材を運んだりと、ダイナミックな仕事に携わることができているのです。

人が自分の力ではやれないようなことをやれるのがクレーン業界の魅力ではないでしょうか。

尾形
仕事のスケールの大きさは、クレーン業界の魅力ですね。私たちも小川建機の本社を訪れるたびに、仕事の“大きさ”を感じます。
新社長の体制で、ますますの発展を期待しています。
今日はありがとうございました!

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